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2008.6.28TORTUREGARDESN

 スピリチュアルブームといわれています。自分でコントロールできる領域、つまり自分の体をはじめ、体の外部にあって自分が直接働きかけられる領域、つまり日常生活や仕事、家庭、人間社会そいうったものを越える、自分ではどうしようもない領域への渇望にも似た志向性が私たちの心のなかに芽生え始めてきています。
人々は、自分の力の及ばない領域、ここでは超越領域と呼ぶことにします、を体験したいと思ったら、宗教とか、占いとか、そうした、もろもろの、精神に作用するサービスを、対価を払って受けることができます。もちろんドラッグや各種犯罪行為など、合法性を欠く手段を選ぶ人もいるかもしれません。
トーチャーガーデンは、超越領域を体感するのにふさわしい、いまや貴重な選択肢のひとつとなった厳格なドレスコードのあるクラブイベントです。
英国由来のこのイベントでは、著名な出演者による、ピアッシングやダンスなど、やや常軌を逸した過激な「身体ショー」が用意されています。本人はもちろん、観る者をも、一瞬で超越領域へと浮遊させられます。参加者たちがしている服装も、超越領域にふさわしく、ボンデージや、サイバーパンクふうのキンキーでビザールなコスチュームばかりです。カジュアルな普段着姿の者は一人もいません。
厳格なドレスコードと、ここでしか見られないショー、暗いなかで大音響で響くテクノ音楽が現出するのは、紛れもなく、参加者一人一人が神的体験を得られるよう慎重に緻密に計算されたサンクチュアルインフラストラクチャー(聖域の装置)でした。思えば、人類は有史以前から、超越領域を象徴する存在としてもっとも保守的なイコンのひとつである、神を求めることにより、超越体験をしてきたのです。神は、儀式のなかで、あるいは、聖域に存在するとされています。地域には、教会が置かれ、人々はそこで儀式をしてきました。じつは学問というのも、神の存在が起源です。神と学問科学はまったく相容れないように感じられるでしょうけれども、すべての学問の起源である「哲学」は、最初に、神とそれに対峙する「自己」を究める学問として出発したのです。哲学科だった私は、何で大学に入ってこんなに「神」のことばかり勉強しなきゃならんのか、無神論の私はうんざりした思い出があります。
私がラバーキャットスーツを着て、割と神妙な面持ちで、このイベントに参加したのには、以上のような背景があったからです。人々のせっかくの超越体験を邪魔しないように、私は慎重に、参加者に取材中である旨を伝え、被写体になってもらいました。そうして得られた写真の数々ですが、なにぶん、季節はずれの全身ラバーキャットスーツときついコルセットのせいで数が少ないのが残念です。今回、すばらしい写真を撮ろうと、アシスタント(声かけ係の若い女の子=全身ラバーキャットスーツにサイハイブーツを着用、と、レフ板持ちのサロのデザイナー渋谷くん=サロのラバーTシャツとブリーフを着用)をともなってプレスで参加させていただきました。ご協力をお願いした方の全員から撮影のご承諾をいただくことができました。本取材にご協力いただいた皆様、主催者の皆様には、この場を借りて厚く御礼申し上げます。なお、撮影時には掲載サイト名をご案内のうえ、撮影させていただきましたが、事情が変わり掲載を止めてほしくなった場合はいつでもご連絡ください。すぐに掲載を取りやめます。掲載中止のご連絡先はcontact@alt-fetish.comです。【取材・文 市川哲也】


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